Friday, March 09, 2007

デザインが語るもの


1.デザインとオーナメント

 人類が道具を手にするようになってから、常にデザインは存在し続けてきた。デザインとは生活の中にある実用性の形であり、そこには視覚的な効果も必要なければ、アイデンティティーを主張することもない。しかしデザインは常に一定ではなく、生活の変化に伴い、常に新しい実用性を形にしてきた。まだ生活の基本が採集と狩猟であった頃、デザインは単純な武器や道具、衣服として存在した。当時は常に獲物を求めて移動が強いられていたために、小規模な集団による共同生活であった。農耕によって定住生活が可能になってからは、さらに複雑な道具が生まれ、居住空間を作り出し、そしてストックのための容器が作られる。移動の必要性がなくなったことから、より大きな単位の集団が誕生し、それまで協力的であった生活も、ストックによって競争的な生活へと変化する。集団は内部においてのみならず、近隣の集団とも階層的な関係を持つようになったのである。社会がより複雑な階層性を持ち、より大きな規模になると、少数の上位層が大多数の下位層を支配するには、物理的な量や力そのものよりも、その力や豊かさを象徴する抽象的な要素が必要となる。最初は単なる税としての穀物や生活用品の納付も、次第に量よりも「形式」が重要視され、儀式的な要素が多く取り込まれた。そして「儀式」の際に使用される容器や道具は、実用性というデザインのみを備えたものであったが、その表面には細部まで凝った模様が施されるようになる。これがオーナメントである。オーナメントは複雑さを増すごとに、より高度な技術を必要とし、より多くの労働や努力が加わることになる。そして集団内部において自己の存在の優劣を象徴するのはもちろん、対外的にも豊かさや権力の強さを示す役割を持つのである。しかしオーナメントはデザインと違い、実用的であることはなく、視覚的なものでしかない。そしてオーナメントがどれだけ複雑であっても、象徴するのは決してそれに関わる技術者や労働者のアイデンティティーではなく、あくまで所持者のステータスなのである。オー ナメントはごく一部の人間関係においてのみ意味を持つのであり、所持者の権力や利害と全く関係ない存在にとっては何ら役目を果たすことはない。

1 comment:

ゆっきぃ said...

そういえば、半端に書いて放置していたので。。。今日は晴れて気温もぐんと上がったので、少し離れたカフェへ。やっぱり・・・勉強はそうはかどらんですね。
さて、「デザインが語るもの」ですが、とにかく要点をまとめて書いてます。大きく4つに分けて、今回は「1.デザインとオーナメント」、今後は「2.デザインとアート」、「3.デザインと資本主義」、「4.デザインとデジタル化」という感じで進めていこうと思ってます。
更新は、不定期に笑 
不明な点、ご指摘、なんでもお願いしますね。まぁ~アートの歴史とかほんと、知らないんですけどね。でも今在るものを、ある側面から切り崩すって、結構面白いのですからね。