Sunday, March 18, 2007

Visible Sound

音を観る

ちょっとおかしく聴こえるかもしれない。

僕もつい先日まで、音は聴くものだとばかり思っていた。
もちろんそれは間違っていないが、それだけでもないのだ。

友人の卒業前のリサイタルに呼ばれた。
彼女が演奏するのはパーカッション。
僕は音楽には疎いのだが、マリンバとヴィブラフォンだったと思う。

会場が小さいということもあって、
彼女とかなり近距離に座る。

僕は普段コンサートでは、
安い学生席に座るのだが、
とりあえず音が聴こえれば一緒だろう、と満足していた。
時には目を閉じて、耳に音を集中させる。

どうやら今回は様子が違いそうだ。

ステージに彼女が現れる。
黒のパンツに黒のシャツ、
いつも降ろした髪をきゅっと上で束ねている。
これから演奏するというよりは、舞台の黒子のよう。
しんと静まり返った空気
彼女は一言も発さず、
深々と頭を下げると、
4つのマレットを手にする。

マリンバの前に立つと、
大きく深呼吸し、
ゆっくりとマレットで空気をなぞる。

その時から、彼女とマリンバとの間で対話が始まっていた。

僕の身体が緊張で震える

彼女はマリンバに向かって強くうなずくと、
勢いよく息を吸い、
マレットを大きく振りかざす。

会場の緊張はピークに達する。

しかし彼女はその手をゆっくりと降ろし、
そっと、マリンバの上を滑らせる。
一つ一つの音が彼女と、そして会場の空気と共鳴する。

僕は彼女から目が離せず、
マリンバの音を聴くよりもむしろ
彼女とマリンバとの間の会話、
いや、むしろフィジカルなコミュニケーションを、
視覚的にとらえる。

僕の頭には
なぜか歌舞伎が浮かび、
目の前の光景は
超音楽的な、
今まで感じたことのない世界であった。

共鳴がやむと
彼女はまた深々と頭をさげて
闇に去っていく。
いつのまにか僕の手は
汗がにじんでいた

No comments: