Thursday, March 22, 2007

デザインが語るもの

 2.デザインとアート
このようにオーナメントはそれを所持する者の権力や地位といった抽象的な概念をビジュアル化したもので、具体的な形にはなりえない。そしてそれを見る者の解釈によって、双方の関係を決定するのである。一対多数の関係において、オーナメントの持つ役割は大きい。アートは視覚的な表現の解釈という点においてはオーナメントとあまり違わないようだが、アーティストがコミュニケーションの主体となっている点においてはその役割を全く異にする。つまりアートはアーティストのアイデンティティーや思想をビジュアル化したものであって、所持者のステータスを象徴するものではない。そしてもう一つ重要な点は、オーナメントはデザインの上にのみ存在するのに対し、アートは必ずしもデザインを必要としないことである。アートはコミュニケーションの主体であるが、それは必ずしも一対多数の関係を必要とするものでないし、社会的な役割を持つ必要もない。そのためデザインの持つ実用性と独立して存在するのである。あくまでも視覚的な表現であるため、アートはデザインの上に存在することももちろん可能だし、それを包括することもできる。こうしてアートというコミュニケーションの手段を手に入れることで、人類の視覚文化は飛躍的に豊かになった。今「文化」という言葉を用いたが、このことはパラドキシカルな要素を持つ。文化=カルチャーは個人において存在することはなく、常に社会によって形成される。つまりアートはその存在する社会を反映した一方的な視覚表現文化ということができ、多くの場合社会的、政治的なイデオロギーを持つ。そして資本主義社会が形成される過程において、アートの持つイデオロギーは、デザインの持つ実用性との関わりをより深めていくのである。

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